ふたつの月

夕方を過ぎてもう夜になろうというのに、外は明るいまま。 空を見上げると、空には月が二つ。 月が二つ出るのは、狐・狸に化かされているから、と昔から言われている。 こんな時は、あたりを見回して手頃な石に腰掛け、キセルで一服す […]

 

夕方を過ぎてもう夜になろうというのに、外は明るいまま。
空を見上げると、空には月が二つ。
20131008_ふたつの月
月が二つ出るのは、狐・狸に化かされているから、と昔から言われている。
こんな時は、あたりを見回して手頃な石に腰掛け、キセルで一服するのがいいそうだ。
ここは都会の真中なので、とりあえずカフェ・ド・クリエに入る。
 

店内がやけに暗い。
注文カウンターには店員もいないので、とりあえず奥の方に向かって声をかけた。
「すいませーん」
 

誰も出てこない。
仕方がないので、脇にあったグラスに水を注ぎ、奥の客席に向かう。
やたらと暗い。
 

ほとんど手探りのような感じで席を探し座るが、なかなか店内は混んでいて、またほとんどの客は、私と同じように水だけをテーブルにおいていた。
 

話し声もなく、店内はしんとしている。
時折、水を飲む音が聞こえる。
 

タブレットでニュースサイトを閲覧すると、「ベテルギウス、超新星爆発」「数週間は明るい白夜状態が続く」などのニュース記事が多数あった。
「なーるほど。先ほどの月は、本来の月とベテルギウスだったのねん」
 

そう思っていると、店内の明かりがついた。
客席を見て、驚いた。客は、私以外はキツネだった。
キツネたちも、驚いた様子で私の方を見ていた。
 

私は慌てて席を立ち「ど、どうも。コンばんは……」と言い残して店を出た。
 

くだらないダジャレを言ってしまったが、何匹かのキツネがつられて「コンばんは」と言ってくれたので、まあいいか。
そうして私は家路についた。
(以上は、妄想ヨタ話デス)
 

でもね、ベテルギウスは、ホントに超新星爆発を起こしそうな気配なんだそうだ。
星の死が悲しいような、1054年以降起こらなかった驚異の天体ショーが楽しみなような。