シンギュラリティー
コンピューター技術がこのまま発達し続けると、シンギュラリティーと呼ばれるある地点で、人類の知能を超える人工知能が誕生するのだそうです。こうした時代に、Triangle March はどう立ち向かうのか!? いろいろな、人工知能のハナシを取り上げながら、次回作の方向性をお伝えします。
シン、シン、シンギュラリティー2045
「2045年問題」という言葉をたびたび目にするようになりました。なんでも、コンピューター技術が「ムーアの法則」通りに発達し続けると、「ある地点」で人類の知能を超える人工知能が誕生するのだそうです。この「ある地点」のことを「シンギュラリティ(技術的特異点)」と呼び、それが2045年頃に訪れそうだというのです。
それを脅威という人もいれば、あたり前の通過点のようにいう人も。どうなってしまうのか、予測はつきにくいですね。iPhone持っていませんが、Siriはなんと答えるか?
また、これまで人間にしかできないと思われていた仕事が人工知能やロボットに代わられるかもしれない――とも言われます。「Google Car」のような無人自動運転車が普及すれば、タクシーやトラックの運転手は仕事を失う、という論調です。英オックスフォード大でAI(人工知能)などの研究を行うマイケル・A・オズボーン准教授の論文「雇用の未来」の中では、コンピューターに代わられる確率の高い仕事が挙げられ、それが週刊誌等で紹介されたりしていました。
クリエイティブなモノは、人工知能に置き換わる脅威が少ない、などとよく言われますが、本当でしょうかね?
ヒットは予測できますのよ
今年の1月に、NHKでやっていた番組「NEXT WORLD 私たちの未来」は、そのシンギュラリティを踏まえた番組でした。私はテレビがないので、知人に頼み込んで録画してもらって観ました。
第一回で紹介されていた「ミュージック・エックスレイ」(Music X-ray)社が開発した人工知能は、過去のデータを基に、音楽をいくつかのパターンに分類し、曲のヒット確率を予測。面白い試みですね。
調べてみると、このシステムは、ノラ・ジョーンズのブレイクを、事前に予測していたのだそうです。デビューしたばかりだった歌手ノラ・ジョーンズのアルバムを、このシステムに読み込ませたところ、ほとんどの曲がヒットすると予測。実際、その年にグラミー賞を取るに至った――。
確かに多くの人に受け入れられやすいものは、商業芸術の場合、かなりパターン化できる気がします。あんまり突飛すぎると、一般的には受け入れられないでしょう。
ハリウッドでは、映画のシナリオを書く際に「ドラマティカ」というアプリケーションがよく利用されていると聞いたことがあります。過去のデータを元に、売れやすいシナリオを指南する機能があるのだそうです。
ヒットしやすい曲を自動生成するソフトウェアなどは、作ることができそうな気がしますし、もう手を付けている人はいるのではないでしょうか。
ズルい人間
知的なゲームは、こういったことを考える際に、ある種のテーマを与えてくれます。
将棋や囲碁は、やってみるとかなりクリエイティブな戦術を要求されるような気がしますが、実際はどうなのでしょう?
チェスだと、伝説的チェスプレイヤーのカスパロフが、IBMが開発したチェスソフトウェア「ディープブルー」に、1997年歴史的敗北を喫しました。
将棋は、拮抗状態だそうです。人間がベストの実力を発揮すれば、コンピューターを上回っているようです。先日4月11日(土)の将棋電王戦では、阿久津八段が将棋ソフトウェア「AWAKE」に、ハメ手のような手を仕掛けて、21手で投了させ、話題になりました。
囲碁はかなり読みも必要ですが、盤面と局面を見ながら戦術を練る――絵を描くような、あるいは雲をつかむような――ところも、かなりあるので、コンピューターは弱かったのですが、モンテカルロ法というアルゴリズムを取り入れたソフトウェアが登場し、かなり強くなりました。過去の人間vsAIの棋譜を見る限り、圧倒的にプロ棋士のほうが強いと感じますが、いつの日か互先で人工知能がプロ棋士に勝つのかもしれません。
作家ですのよ
さらにさらに、星新一のショートショート全編を分析し、エッセイなどに書かれたアイデア発想法を参考にして、人工知能におもしろいショートショートを創作させることを目指すプロジェクト「きまぐれ人工知能プロジェクト作家ですのよ」。
これ、期待してしまいます。
星新一作品の中には、「何でも病気を診断できる機械がある。それで診断すると、とても苦しむ患者がいる。機械の診断では、体は正常。原因がわからない。何度調べても、患者は苦しみ続ける。人が調べてみたら、機械アレルギーでした」なんてのもあるので、そんな感じの作品を人工知能が書いたら、ちょっと面白いでしょうね。
さて、私たちは?
こんな時代において、一応ポップスというジャンルの路線にいる私たち Triangle March は、果たしてどんな創作をしていけばいいのでしょう?
遺伝的アルゴリズムを用いた音色変化シンセサイザーを使ったり、歌詞と絵に暗号を組み込んだり、可聴音ギリギリにナゾのメロディーを入れておいたり……と、いろいろ遊んでおりますが、まー細かすぎて伝わらない。
メンバーには、振り切った突飛さはなくして一見普通を目指す! と宣言して始めたのですが、学生の頃に研究していたダダや未来派、趣味の前衛芸術、ブラックメタルやヘヴィドローン、ドゥームメタルが、ビミョーにバランスを崩すのか抑え過ぎなのか、これまた非常に伝わりにくい形式に。
でもでも、せっかく制約の少ない環境で制作させてもらっているので、あがきながら楽しみながら、メンバーそれぞれの魅力や持ち味を借りつつ、いろいろ追求していきたいですね。
気分はアナール学派で、ポップスというジャンルに身をおきながら、人類のナゾを、あらゆる方面から眺めて楽しむような、やっぱそんな世界の音楽を作りそうです。