F氏との対談……その4

F氏とZazaの対談(第四回/最終回)を掲載します。
今回は、歌詞について、アレンジについて、そして次回作への思いを語ります。

 

F氏とZazaの対談(第四回/最終回)を掲載します。
今回は、歌詞について、アレンジについて、そして次回作への思いを語ります。

■歌詞について

F氏 ── 「ヴィマニカ・ヴィマニカ」はさ、歌詞がそのまま物語になっていて面白いよね。
結構言葉の数が多いでしょう。言葉の繰り返しも少ないし。作詞も大変だったんじゃない?

Zaza ── 歌詞は、だいたい大まかに作っておいて作曲&編曲し、その後で歌詞を作りなおすという感じで行いました。
神話をもとにしたりしている部分もあるので、調べたりしながら、あと、軽く考証のようなことをしたり……。
Yulee作曲の曲も、最初に元となる歌詞を渡して、物語や場面、その曲の意味を説明をし、曲を作ってもらってから、最終的に歌詞を書き換えました。

F氏 ── なぜ、そんな工程を踏んだの?

Zaza ── 歌詞をもとに作曲すると、言ってみれば「自然」な感じなのです。それがちょっと嫌だったんです。無理して歌詞をつめ込んだり、本来区切ってはいけないようなところで言葉を区切る。歌詞を詰め込むと、言葉遊びみたいで面白いかなっていうところもあり。また、「私は歌詞を書く」を「わた、し、わ、かし、をか、く」とかで切ると、言葉が音として切れて、ちょっと面白いでしょう。聞き手の脳が色々働いて、文の意味にあれこれニュアンスを勝手に盛り込む感じもありますし。

F氏 ── 現代演劇にそんなようなのあったね。

Zaza ── 分かりやすい歌詞に越したことはないので、だいぶ表現……というか言葉遣いを変えた部分はありました。たとえばイディオム(慣用句)的なものですね。完全にイディオムをなくしてしまうのもどうかな、という思いがあり、いくつかは残してみました。たとえば「モーゼ!」の「黒山の人だかり、かき分けー」って部分とか。Yuleeは「黒山の人だかり」の意味が分からないって言っていましたけど。

F氏 ── なるほどね。そういうのって使われなくなってきた言葉なのかね。
あと、ヘブライ語の歌詞とかあったね。最後の曲かな。「The Blind Watchmaker」か。

Zaza ── あ、あれ、一番最初は英語だったんですよ。

F氏 ── そうなの? だから、タイトルが英語なのか。

Zaza ── タイトルは、リチャード・ドーキンス(「利己的な遺伝子」で有名な英国の科学者)の本のタイトルからですね。外国語コーラスの部分の歌詞も、無神論的な生物の進化を歌っています。

F氏 ── 創世記的な歌詞の裏で、無神論的なコーラスが歌われているわけか。なんか、深い考えがありそうだね。

Zaza ── 物語の種明かし的な最後の曲なので、色々な暗号や思いや謎を詰め込んであります。けど、まぁあまり考えずに楽しんでいただきたいと思います。「謎が隠されているのねー。ふーん」程度で。別に強い社会メッセージがあるわけではありませんから。

F氏 ── オレさ、ブックレット見ていて、一つ謎を発見したけどね!

Zaza ── そうですか!? 何です? (F氏に説明されて)……あー、さすがFさん。よく見つけますね。

F氏 ── 話を戻すけど、最初英語だったものが、なぜヘブライ語に?

Zaza ── 歌入れの直前まで英語だったのですが、聞き直していると、英語が生々しくて、天界の歌というより、ヒト個人の歌っぽいのがダメかなー、と。で、ラテン語に直してみたんです。

F氏 ── へぇ! ラテン語! 語学堪能だねー。

Zaza ── いやいや。Google翻訳様さま、です。

F氏 ── ラテン語はカッコイイでしょ!

Zaza ── そうですね。なかなか気に入っていました。が、これもなんだか天界の歌というより、人間界の歌っぽい気がしまして、最終的には、ヘブライ語にしました。もっと突き詰めれば、エノク語(天使の言葉とされる)が良かったのですが、調査が追いつかず、断念しました。

F氏 ── ヘブライ語は、さ、翻訳はGoogle先生に頼るとして、発音は難しいんじゃないの?

Zaza ── Google翻訳は、制作当時はヒンディー語もヘブライ語も読み上げ機能はありませんでしたので、本当に苦労しました。最終的にはヘブライ語のサイトから、Hebrewの読み上げソフトをダウンロードしてきて、それに読み上げさせて、聞こえた音をカタカナで書き出して……。そんな感じでした。

F氏 ── 歌だから、単に翻訳しても、リズムに合わなかったりするよね。

Zaza ── 英語→ヘブライ語で翻訳しましたが、もう単語や言い回しを変えて、何度も翻訳しました。Google先生、トラフィック増やしてごめんなさい、ですよ。
ちなみに、1曲目のサンスクリット語は、発音がよくわからなかったので、ベンガル語の数え歌をYoutubeで探したり、発音記号を調べたりしながら、作りました。

F氏 ── コーラスとかの歌は誰が歌っているの?

Zaza ── メインはボーカロイドですね。これも、日本語や英語ではない言葉を歌わせるのが難しくて、発音記号で指定して歌わせています。ヤマトクジラのCM部分は、私も歌って合成しています。

 


■アレンジそして未来へ

F氏 ── アレンジ面では、なにか話しておくことはある?

Zaza ── アレンジは、人間が演奏するということを考えなかったので、変なことも色々やりました。後で、Yuleeからいっぱいダメ出し食らった(笑)。音楽的におかしい、って。

F氏 ── (笑)

Zaza ── 曲によっては、(コンピューターの)プログラムを書いて、コードをつけたりしました。リチャード・ドーキンスの「盲目の時計職人」という本の中に「バイオモルフ」というプログラムがありますが、あれにインスパイアーされて、音楽コードの「バイオモルフ」みたいなものを作って。ひとつのコードを選ぶと、次のコードのバリエーションがいくつか示され、一つを選ぶと、その次のコードのバリエーションが示されるような感じ。あんまり大したプログラムではないんですけど、実験的にやってみました。

コラム:バイオモルフについて

バイオモルフ01
特定のルールで枝を伸ばすように描画するプログラム。中央水色枠を原種として、その変種(亜種)がまわりに表示される。
バイオモルフ02
変種を選ぶと、それを中央に、更に変種が表示される。
バイオモルフ03
まるで生物の進化のように、形状の変化が起こる。

F氏 ── 案外、実験的なことしているんだね。CD聴く限り、親しみやすい音楽になっているので、そんな実験性があるなんて、知らなかったよ。

Zaza ── そういえば、自作ソフトウェア・エフェクターも使っていますよ!

F氏 ── ミックスもZazaくんがやったんだよね。

Zaza ── はい。時間がかかってしまいました。プロジェクト開始当初は、レコーディングもミックスも自分でやるつもりがなかったのですが、レコーディングしているうちに、自分たちでやったほうがいいかなーって思い始めて。

F氏 ── なかなか、意欲的だったね。いや、面白いアルバムだと思ったよ、トータル的にね。

Zaza ── 歌詞の繰り返しも少なくて、リフレイン的なものがなくて……。あと、あっさりした感じにしたかったという思いもあり、聴かせどころなどの面でポップス的にはどうなのかなって部分も多いのですが、次回の課題にします。

F氏 ── このアルバムさ、ブックレット読みながら聴くと、意味が分かる部分があるよね。そういった意味では、質的な意味で「新しいジャンル」に属しているのかもしれない。
次回作にも期待しているよ。もう構想とかはあるの?

Zaza ── はい。アルバム3枚か5枚分くらいの構想はあります。細かいところはまだ詰めていませんが。
次回は、音楽的にはもう少しJ-POP寄りのアプローチを増やしたいなと思っています。

F氏 ── 楽しみにしているよ。
じゃあ、この対談はこんな感じにしておこうか。また別の細かいことは、改めて対談しよう!

Zaza ── はい。長時間ありがとうございました。

 
 

F氏との対談は、今回で一段落です。
気軽に読める対談にしたかったのですが、なんだかんだまとめてみると、長い対談になっておりました。
実際には、もう少したくさん話していたのですが、マニアックすぎる話も多く、またミックス部分の話は、経緯の説明が多かったため、思い切ってカットしました。
お付き合いありがとうございます。
YukkyとYulee、それぞれZazaが対談したものもありますので、こちらも近いうちに公開いたします。
ではでは。

対談中の1st Album 「ヴィマニカ・ヴィマニカ」は発売中です。未入手の方はぜひ!


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