F氏との対談……その1
F氏とZazaによる対談を掲載します(第一回目)。1st Album 「ヴィマニカ・ヴィマニカ」誕生について、Triangle March 結成以前の様子を含め、語ります。
予告していた対談を、何回かに分けて載せていきたいと思います。
まず、私Zazaと、昔から面識のあったアート関係者F氏との対談の第一回目です。
Zaza ── インタビュー企画して頂いて、ありがとうございます。
F氏 ── いえいえ。でも、インタビューにならないかもね。対談にしましょう。Zazaくんとは、付き合い長いから、聴き役に徹することが出来ないと思うよ。
Zaza ── Triangle March は、どこの馬の骨とも分からないユニットなので、思いがけない迷惑がかからないように、Fさんのこと、一応名前を伏せて進めたいと思います。
F氏 ── あ、そ? 別にいいんだけど。でも、秘密主義っぽくて、Zazaくんらしいかもね。だけど「誰こいつ?」ってならない?
Zaza ── (笑)Triangle March 自体が、「誰こいつら?」なので。
F氏 ── まあいいや(笑)。Triangle March が有名になったら、名乗り出ることにするわ。では、始めましょうか。
Zaza ── (笑)よろしくお願いします。
■「ヴィマニカ・シャストラ」教科書だけど、ちんぷんかんぷん分かんない
F氏 ── 「ヴィマニカ・ヴィマニカ」ってタイトルだけど、一体何なの?
Zaza ── インドの古代神話に出てくる神様の乗り物に「ヴィマーナ」というのがあって、その操作方法や構造を記した古文書が発見されていて、「ヴィマニカ・シャストラ」という教典なんです。
F氏 ── いきなり、斜め上から返答された感じだな(笑)
Zaza ── その教典の名前の「ヴィマニカ・シャストラ」から「ヴィマニカ」っていう部分をもらって、強調する意味で2回繰り返してタイトルにしました。
F氏 ── その、ヴィマーナとやらはどんな乗り物なん?
Zaza ── インドで描かれた絵などを見ると、牛車っぽかったり船っぽく描かれているのが多いみたい。あと、インドの写真などで見かける寺院があるじゃないですか、先端の尖った塔みたいな建物。あれは、そのヴィマーナを模して作ったようですね。
F氏 ── へぇー。
Zaza ── (本を出してきて)この絵とか見ると、寺院の下に車輪がついているでしょう? こういったものもヴィマーナだと思われるんです。
F氏 ── なるほど。
Zaza ── あと、「ラーマーヤナ」かなんかの挿絵で、白鳥っぽい頭がついたヴィマーナの絵もありました。
F氏 ── ああ、だからジャケットなどでは鳥みたいな乗り物として描いたんだね。
Zaza ── はい。
あと、先ほど出てきた「ヴィマニカ・シャストラ」には、本当にいろいろな種類のヴィマーナが出てきて、それぞれ形態が違うんです。
サンスクリット語で書かれた描写を元に、図にしてみたという1920年頃の画像もあって、アポロ月面着陸機みたいな形のスンダラ・ヴィマーナ。それを大きくしたUFOちっくなルクマ・ヴィマーナ。潜水艦みたいな、トリプラ・ヴィマーナ。で、鳥や飛行機っぽい形のシャクナ・ヴィマーナ……
F氏 ── ああー。それが、あの1曲めの怒涛のラップ(?)の歌詞になっているんだね。
Zaza ── あ、そうです。そうです。で、多分……なんですけど、そのヴィマーナ信仰みたいなのが日本に仏教とともに伝わって、お祭りの山車や神輿になったんじゃないかな、と思うんです。
まさにあれ、神様の乗り物でしょう。神輿なんか空を飛ぶように担ぎあげるし、鳥みたいなのも付いているし、ヴィマーナの絵にあるような、玉座みたいな「おウチ」が乗っかっていますしね。
F氏 ── お!そうだね。面白い。確かに、似ているかも。
Zaza ── まあ、それは個人的な思いつきのレベルです。
お神輿の起源は、三種の神器を聖櫃に入れて運んできたヘブライ人由来、という説もあるようで、そちらも面白いのですが。
■最初のキッカケは?
F氏 ── で、なんでそのヴィマーナをモチーフにしようと思ったわけ?
Zaza ── なんなんでしょうかね。最初の数曲は、もうサラサラと出来上がってしまったので。
とあるライブハウスでYukkyが歌っているのを偶然見かけて、「このコは、現実離れした感じの歌を歌えば面白いのになー」とか、勝手に考えながら見ていたんですよ。頭に浮かんでいたのが、なんかSFチックな歌詞を歌う姿。例えば、冷凍カプセルで宇宙に脱出しなくてはならないような、そんな歌。ですね。
F氏 ── SFなんだね。
Zaza ── なので、例えば『相対性理論』の「小学館」をカヴァーしてみたら? ってことも、ちょっと思ったんですけど、ライブの帰りの電車でいろいろ思いを巡らしていたら、なんとなく頭に曲が出来ていたんですよね。
で、帰宅してパソコンつけてメロだけ打ち込んでおいたんです。
F氏 ── 歌詞は後から?
Zaza ── 電車の中で、ヴィマーナの教習所に通うのが面白いかなって、歌詞もなんとなく出来ていたと思います。
F氏 ── へぇー。でも、普段はデザインや映像みたいな仕事しているわけでしょ。もう、普通にDTM環境は整えてあったの?
Zaza ── んー。いや、何年か前にパソコンゲーム用の音楽作って以来、全く立ち上げていなかったので、だいぶいろいろ不備がある状態でしたね。
ライブでYukkyを見かけた翌日、ちゃんと打ち込んでみるか、って打ち込みをし始めたものの、エラーが出たりするので、ソフトがちゃんと動くようにする調整作業に突入してしまって……。
その作業中、フリーのシンセ音源とか、面白いものがあったので試したり遊びながら打ち込んだ感じです。
F氏 ── それが、「ヴィマーナ教習所」になったんだね。
Zaza ── 最初はチープで古い感じのテクノポップがいいかなぁ、と思っていたので、昔の安西史孝さん(アニメ「うる星やつら」の音楽)っぽい感じで。ラムちゃんが空を飛ぶ音みたいなのがいっぱい入っていました。
F氏 ── うわ。うる星やつら! 古いねー(笑)
Zaza ── で、次に「モーゼ!」を作って、それも当初はベースラインが「デッデデ♪♬、デッデデ♪♬」って、YMO?っぽかった。
仮歌は自分で歌うつもりだったのですが、ボーカロイドを手に入れることができたので、それで入れておきました。
F氏 ── 最初は、その2曲だったんだね。
Zaza ── はい。で、「なんかアルバム作ってみるか」という気分になってしまったんです。
以前、Yuleeと打ち込みの曲を一緒に作ろう、という約束をしてあったことを思い出し、Yuleeに連絡をして、この2曲を聴いてもらいました。
F氏 ── で、ユニットの話を持ちかけたの?
Zaza ── いえいえ。まだ、そんな具体的ではなかったのです。
ですが、Yuleeがその2曲を「なんか面白い」といってくれて、「いっぱい曲を書けば、アルバム出せるんじゃないかな」って話になって、まず仲間になってもらったんです。
F氏 ── 過去に約束をしていたとはいえ、なんでYuleeさんだったの?
Zaza ── なんか、Yuleeって、性格がやたらといいんですよね。天然……というか無原罪の人みたいに。
F氏 ── 無原罪!?
Zaza ── 彼女が以前打ち込みの仕事をしている時に、パソコンやらDTM環境セットアップのお手伝いしたりしたことがあったんですが、その時のスタジオで、もう私の趣味で雑音音楽やらブラックメタルやら現代音楽を聴かせて……。彼女、音大出なので、ぶっ壊れたような音楽聴くと真面目に戸惑うんですよね。そのリアクションが面白くて。
F氏 ── 迷惑な人だね(笑)
Zaza ── (笑)でも、そんなアナーキーな話をしていると、意外とこちらの勉強にもなって。
あと、私は我流で音楽を作っていたので、Yuleeが仲間に入ると、音楽的におかしなところを直してくれるかなっていう面もあります。
それから、Yuleeは、ちょっとおしゃれなアレンジをするんです。綺麗なコードをつけるなぁ、とも思っていました。
F氏 ── 音大出のおじょうさんなんだ。
Zaza ── あ、そういう感じはないです(笑)。すごい天然な感じがあるので、そういった点ではお嬢様っぽいのかもしれませんが、ぜんぜんオタカクトマッたところもないし、ネガティブなことを話しているところを聞いたこともないですね。
F氏 ── へぇー。珍しいね。
Zaza ── 普通の人なんですが、あまり見かけないヒト。という、すごく珍しいタイプの人物です。
F氏 ── ???あ、そ!
Zaza ── まぁ、性格的にも音楽的の趣味的にも、私と真反対の人間なので、チグハグしていて面白いかなって、Yuleeを仲間に引き入れました(笑)
F氏 ── かみあわないんじゃないの?
Zaza ── (笑)スタジオで私とYuleeが話をしていると、周りの人達がかみあわなさ加減を笑うんですよ。「うわー、このかみあわなさっぷり!」って。
F氏 ── (笑)
Zaza ── でも、当人同士は盛り上がって会話していたりするんですよね、面白いことに。「解剖台の上で、ミシンとこうもり傘が出会う」効果が、あるんじゃないでしょうか!
F氏 ── お!シュールレアリスムだね。
次回に続きます。
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