パローレ・イン・リベルタ
自由語と訳される、PAROLE IN LIBERTA。 直訳すれば、自由な状態にある言葉。ひょっとすると、“PAROLE”には、「口語」というニュアンスが含まれているかもしれません。 もともとは、イタリア未来派(1900 […]
自由語と訳される、PAROLE IN LIBERTA。
直訳すれば、自由な状態にある言葉。ひょっとすると、“PAROLE”には、「口語」というニュアンスが含まれているかもしれません。
もともとは、イタリア未来派(1900年代初頭の総合芸術運動)の首領マリネッティが言い出した、既存の言葉で表し切れない状態や動きを示すために新しく作られる擬態語・擬声語のような言葉で、ダダイズムの詩作などに影響を与えました。
マリネッティの作品で有名なものは以下の ZANG TUMB TUMB。
ZANG TUMB TUMB は、大砲の弾の音らしいので強引に訳すと「ズガーン、ドゥン、ドゥン」みたいな感じ?
この ZANG TUMB TUMB というワードは、PROPAGANDA や ART OF NOISE を輩出したトレヴァー・ホーンの伝説的レーベル「ZTTレコーズ」の名称に取り入れられたそうです……ちょっとひねって Zang Tuum Tumb らしいのですが (ちなみに、ART OF NOISE は、ルイジ・ルッソロの論文のタイトル論文『L’arte dei rumori』の英訳)。
未来派やダダイズムでは、こうした自由語を紙面に表現するにあたり、(上の図のような感じで)視覚的に文字を配置する方法が取られました。
Adobe Illustrator を使うのが当たり前の現在では、さほど苦労はありませんが、様々な大きさの活字を配置する「視覚詩」は、1900年頃は大変だったと思います。
また、こうした自由語による詩の朗読も行われ、録音物として残されています。
CD化されているかどうかは不明ですが、「Dada for now : a collection of Futurist and Dada sound works」というLP(ビニール盤)がかつてリリースされていて、私も苦労して手に入れました。マリネッティ本人のアジテーション+擬音みたいなものから、ダダの玩具笛+タンブリン+抑揚を極端につけた朗読(つーか劇?叫び?)や、咳やくしゃみを使ったもの。そしてイントナルモーリなど、なかなか面白いレコードでした。
ちなみに、こんなことに影響を受けたりしているので、実は Triangle March の「ヴィマニカ・ヴィマニカ」のサウンドでも、ちょっとしたノイズを混ぜ込んでいますが、スッゴク薄めているんで、聴こえないかも。
日本では、森鴎外らによって未来派やダダイズムが紹介され、主に大正時代にその影響を受けたアバンギャルド芸術運動が起こりました。マンガ「のらくろ」の作者、田河水泡さんなども「MAVO(マヴォ)」というアバンギャルド芸術運動の一員として活躍。メンバーらは二科会に石を投げたりしていたそうです。(^_^;)
前回、高橋新吉の「皿皿皿皿皿皿皿皿皿皿皿皿皿皿皿皿皿皿皿皿皿皿皿皿 倦怠~」という詩に言及しましたが、多分その作品もそんな時期の作品だと思います。
未来派やダダ以外でも、ステファヌ・マラルメの「骰子一擲(とうしいってき)」という詩集も、視覚的に文字がレイアウトされています。不思議の国のアリスにも、視覚的に文字が配置されている箇所がありますね。
ということで、今日は久々に視覚詩集を引っ張り出してきて眺めてみました。
鮭と人間の定価、50銭ナリ。