調べるトラベル「火星カニ?」

冷房がぬるくかかった部屋で、私はタブレットとノートPCを弄(いじ)っていた。 Triangle March の作品を作るためには、ちょっとした考証が必要で、小アイディアに対してもいちいち調べたいことが発生するものだから、 […]

 

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冷房がぬるくかかった部屋で、私はタブレットとノートPCをいじっていた。

Triangle March の作品を作るためには、ちょっとした考証が必要で、小アイディアに対してもいちいち調べたいことが発生するものだから、検索作業も縷々るるとしたものとなる。
 

古代都市を検索し、宇宙を調べ、エネルギー問題の記事と旧約聖書を見、A4の紙をペンで汚していく。
楽しといえば楽しいのだが、ふとした間隙かんげきに第三者的視点での我が姿を思うと、さい河原かわらで石積みをする子供のひとりを、眺めているかのようでもある。いわばキリがないのだ。
 

気分転換に、熱いコーヒーをすすりながら、ニュースサイトを閲覧してみた。
私にとってのメインニュース記事は、オカルトニュースの類である。
 

本日の人気記事は「火星にカニ?」というニュースであった。
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NASAが発表した火星の写真を丹念に見て、そこに人工の遺物や生物の痕跡を探るという
Journey to the Surface of the MARS火星表面旅行」という好事家こうずか集団の発見だという。
なるほど、甲殻類カニのような生物に見える。
 

・・・・・

 
私は、ずっと以前、子供の頃に見た火星の映像を思い出した。
それは、テレビのオカルト特集番組で、「第三の選択」というイギリスの放送を再編集したものだった。

とある博士からリークされた映像。暗号化されており、解読すると火星の映像が流れる。
――青い空の火星。探検隊は火星に降り立とうとしている。火星の地表。すると土の中で、何やらもぞもぞと動く生物らしきものが映し出される。――

子供だった私は興奮した。画面では生物の姿は見えず、土を押しのけるさまはモグラなのだが、私は、カブトガニのような甲殻類の姿を、頭の中に思い描いていた。
もっとも、これはイギリスのテレビ局が作ったエイプリルフール番組だという(後年知り、ガッカリした)。
 

・・・・・

 

さて、この「火星にカニ?」の記事のオリジナルはどこにあるのであろう。
私は、「Journey to the Surface of the MARS」のFacebookページを訪れてみた。
「火星表面での発見」が日々なされているようである。問題の画像の記事には、ありがたいことに、NASAのオリジナル画像へのリンクがあった。

NASAで公開されている画像はこちらである。
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思っていたより、低解像度である。

Photoshopで開いて、該当部分を拡大してみたが、単純拡大しただけでは、先の画像のようなカニの画像に見えない。
カニ部拡大

アンシャープマスクやら、ハイパスやらで輪郭強調補正をしてみても、今ヒトツである。
カニ部拡大_補正

かなり作為と創意工夫をもって補正しなければ、ニュース記事のような「明らかにカニ」っぽい画像は得られないようだ。
「Journey to the Surface of the MARS」に参加する人たちの熱意に驚かされる。
 
 

――そろそろ、あの面倒くさくも楽しい作品制作作業(……というか調べ事)に戻ろう。
私は、壁に飾ったししゃもが飛んでいる絵を眺め、一つのびをし、再びタブレットとペンを握った。
 
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註:
ししゃもが飛んでいる絵 由起古猫が描いた「ししゃも飛行」という作品
由起古猫:ししゃも飛行

リンク:
Journey to the Surface of the MARS
https://www.facebook.com/JourneytotheSurfaceoftheMARS

NASAのオリジナル画像
http://mars.jpl.nasa.gov/msl-raw-images/msss/00710/mcam/0710MR0030150070402501E01_DXXX.jpg